反復可能な要素を活用すること
プロジェクトに対して場当たり的なアプローチをとると、それにエネルギーとリソースを多く費やしてしまい、本当に必要な要素が欠けてしまう危険性が常にあります。やるべきことを単純化する最善の方法は、反復可能な要素を使うことであり、できれば反復可能なサイクルで行うことです。
例: 品質チェックリスト
チェックリストは、反復可能な要素のシンプルな例であり、多くの人が私生活や仕事で使用している。例えば、成果物の品質基準を考えてみましょう:
- まず、すべての基準のチェックリストを作成する
- NUP6が推奨するのは、それを一般化してみることです。プロジェクトにおいて類似した成果物は他にないだろうか。ある場合、そのカテゴリーの成果物の一般的な品質チェックリストを作成し、すべての成果物に使用する。いくつかのバリエーションがある場合は、一般的なリストはそのままにして、個々の成果物用にいくつかの項目を追加します。これで、繰り返し使えるチェックリストができました
- さまざまな種類の成果物について汎用的なチェックリストを作成したら、それらの間で繰り返される要素が見つかるかもしれません。それは実質的にそれらの要素の親カテゴリーがあることを示しています。その場合、すべての汎用チェックリストの項目を繰り返すのではなく、それらを抽出して親チェックリストに入れることができます。最終的には、プロジェクト全体に対して1つの汎用チェックリストができるでしょう。スクラムの “完了の定義 “は、プロジェクトレベルのとりわけ品質に対するチェックリストを使う例です。こうすることで、各成果物はカテゴリの階層に属し、その連鎖の中ですべてのカテゴリのチェックリストに現れる項目を満たす必要があります
こうすることで、親チェックリストの項目は、その下にあるすべての成果物に対して繰り返し使用できるようになり、計画と実行の時間とエネルギーを節約できます。
さらに重要なことは、1つのプロジェクトでこれを行えば、将来、類似したプロジェクトすべてにこれを調整しながら利用することができ、これは複数のプロジェクトで繰り返し使える計画のフォームとなります。
例: プロセスとワークフロー
成果物や、それに関連する目標の中には、標準化され、反復可能な特定のステップが必要なものがあります。例えば、成果物を個別に設計し、承認する必要がある場合、すべてのステップ、関係者、おおよその期間を明確にするシンプルなワークフローを準備することで、多くの面倒なことを避けることができる。ただし、ワークフローやプロセスを複雑にしすぎたり、文書化しすぎたりすると、かえってマイナスになるので注意が必要です。プロジェクトに関わるすべての人にとって、ワークフローやプロセスは、彼らの実際の仕事を妨げる官僚的な文書ではなく、彼らの仕事をサポートし、すべてを簡単にするものと見なされるべきです。
アジャイルプロジェクトでは、反復型開発アプローチで繰り返される要素があり、あるタイプの開発活動は、それぞれの特性(フィーチャー)で繰り返されます。例えば、XP(エクストリーム・プログラミング)の一般的な日課である、ペアを組み、アイテムを選び、ホワイトボードで設計し、テストスクリプトとコードを構築し、コードを統合する、などがそうです。
技術的な活動に使用できる繰り返しのワークフローの他に、プロジェクトマネジメント活動にも繰り返し可能な要素を持つことができます。PMBOK®ガイド、PRINCE2®、DSDM®のプロセス、P3.expressのアクティビティ、スクラムのイベントは、このコンセプトの例です。
例: サイクル
プロジェクトを管理するための繰り返し可能な要素を持つことは有用です。反復可能なサイクルに入れることで、さらに簡単になります。これらのサイクルは、プロジェクトのマネジメントやリーダーシップに携わる人々の日々の活動を大幅にシンプルにします。複数のフェーズがあるプロジェクトで使用されるPMBOK®ガイドのプロセスグループのサイクル、PRINCE2®のステージ、P3.expressの日次、週次、月次のサイクル、DSDM®のイテレーションとタイムボックス、スクラムのスプリントは、すべてこのコンセプトの例です。
短いサイクルは長いものより理解しやすく使いやすく、例えば、スクラムのスプリントは、PMBOK®ガイドのフェーズとは対照的です。しかし、短すぎるサイクルは、ある種のプロジェクトをサポートするのに十分ではないかもしれません。その解決策として、DSDM®の長い反復サイクルを伴う短いタイムボックスサイクルの活用や、P3.expressの日次、週次、月次サイクルの使用のように、複数のサイクルを使用することが考えられるでしょう。
例: 方法論
プロジェクトを実行するための方法論やフレームワークを使用することも、繰り返し可能な要素を使用する例といえます。これは、PRINCE2®、P3.express、DSDM®、スクラムなどの既存のシステムでもよいし、自分でカスタマイズしたり構築したりしたものでもよいです。ただし、通常は、ゼロから構築するよりも、既存の手法の1つから始めて、ニーズに合わせて適応させる方がよいでしょう。
どれも反復可能な要素というのは抽象的なものなので、現実の世界で使うにはカスタマイズするが必要です。しかし、抽象度合いとカスタマイズの必要な度合いには幅があります。小規模で比較的具体的な品質チェックリストは、抽象度とカスタマイズの必要性が最も低い側の端に位置し、一方、方法論のようなものはカスタマイズの必要性が最も高い側の端にあります。反復可能な要素が適切にあなたのニーズに合わなくならないように、いつもカスタマイズの必要性については留意しておくことが重要です。
翻訳者: Takashi Izumoto